10月13日(土)第5回レッスン。
黒鳥のヴァリエーション(禍々しい音楽のヴァージョン)に挑戦し、オトナの悪女力( ー`дー´)キリッ が活きまくる目線や腕の使い方など表現のポイントを細かく学び、ラストのピケ・トゥール&クペ・ジュテ・アン・トゥールナンのマネージュではもう千鳥足になりながらも何とか通しで踊りきり、今回も最高の達成感と充実感!
……と思ったところまでが、この日の“第1幕”。
じつはここからが当講習会の真骨頂、おそらく他に例をみない内容のレッスンの幕が上がったのであります。
あまりにも有名な“黒鳥のグラン・フェッテ32回”(今回はすっ飛ばしました)でオディールが王子のハートをノックアウトした直後の、演技の場面。
「母上様、僕はこの女性と結婚したいです!」と胸いっぱいの王子に、
「では、まずは結婚の誓いを立ててもらいましょう」と迫るロットバルト。
そして王子がオディールの前に跪き、その手にキスをしようとした瞬間――
「ふはははは、愚かな王子よ!!!」
二人の間に割って入るロットバルト。
オディールが指を指すその方向に目をやると、窓の向こうに浮かび上がっているのは愛しいオデットの姿……。
「だ、だまされた……!」
うろたえる王子を高らかに嘲笑うオディールとロットバルト。
そして悪魔たちは疾風のように舞台奥へと駆けていき、煙のように消えてしまう――。
……と、このスピード感あふれるシーンの演技を練習いたしました。
じつはこの〈オディールが王子を嘲笑う〉というくだり、受講者のみなさまからの「やってみたい!」というリクエストが非常に多かった場面でした。
さすがみなさま、お目が高い! そして目の付け所がマニアック(笑)
指導する先生方からすると、「ちょ、そこだけやるって結構ムリヤリなんですけど……」という感じだったかもしれないのですが、われわれの夢と希望を叶えるため、ちゃんとレッスンに組み込んでくださった綾先生、竜太先生。
あらためまして、心より御礼申し上げます。
本当に、ご無理を申しました。
またこの場面の主な登場人物は
・ロットバルト
・ジークフリート王子
・オディール
の3名であるわけですが、今回のレッスンでの役割分担は
ロットバルト役(&オディールのお手本)=綾先生
ジークフリート役(&全体的な演技のご指導)=竜太先生
オディール役=われわれ全員(25名)
……両先生、本当に、ご無理をおかけしました。
でもでも、
楽しかった!!!ヽ(≧▽≦)ノ
受講者のみなさま、演技に挑むことの楽しさ・おもしろさが、めちゃめちゃ感じられましたよね……?!?!
まず、オディールが王子に手を差し出し、誓いのキスをさせようとするところ。
ここで竜太先生が教えてくださったポイントが、非常におもしろいものでした。
「手はできるだけ低い位置に出してください。
気高い王子がひざまずき、身を低くしてオディールにキスを捧げる。
その様子を高い位置から見下ろすオディール……という、この場面の“上下関係”を見たい。
その高低差が大きければ大きいほど、この場面のドラマが際立ちます」
この場面、舞台を見ていると一瞬ですが、 “手を差し出す”何気ない動きひとつにも、これだけちゃんとドラマを計算した上での演出がなされているんですね。
個人的に、今回のレッスンで最も感動したポイントのひとつはここでした。
あと、手を低く出そうとすると自然と顔つきが“上から目線”になり、高飛車な気分になれるのも、ちょっと驚きでした。
そして王子にオデットの影を見せつけ、うろたえる彼を遠巻きに眺めながら「おあいにくさま〜(m`∀´)mイヒヒ」と意地悪な本性を出すところ。
ここは決まった動きはなくフリー演技ということで、われわれの女優力が試されました。
こういう時、必ず1人、また1人と出現するのが
え?北島マヤなの?
と見紛うような演技派のみなさま。
ふだんは控えめに佇んでいらっしゃるのに、こうした演技になると突然びっくりするような演技力を披露なさる。
例えば
「オーッホッホ! なんてお馬鹿さんな王子だこと(`∀´)」
と、場の空気が凍り付くような高笑いの感じを、身振りと表情だけで出せる方。
「フフ……ウフフ……アーッハッハ!!!」
と、徐々にクレッシェンドしていくような笑い方を表現してみせる方。
さも愉快そうに胸元に当てた手が、やけに妖艶な方。
……みなさん、あらかじめ映像などを見て予習・研究してきてくださったのでしょうか?
それとも、やはり女性というのは誰しも生まれついての女優なのでしょうか……。
とにもかくにも、こういう演技がパッとできてしまうのが、“人生”というものを知る大人のバレエの素敵なところ。
ワタクシも結構な人生経験を積んできているはずなのですが、もう少し思いきってやらないと演技としては全く地味で、何も見えてこないんだな……と、みなさんを見ていて思いました。
その後は、お待ちかね(?)の“嘲笑う”仕草のところ。
右腕は上、左腕は横に伸ばし、状態を低いところから起こしながら揺すって「ふはははは……」と笑っている様子を動きで見せるところです。
こういう動きって、普段のレッスンでは絶対にやらないことですよね。
舞台で見ているとめちゃくちゃ楽しそう(?)だし、動きとしては難しそうに見えないし……ということで私も喜び勇んでやってみたのですが、
あ、あれ……?
意外とどうしたらいいかわからない。。。
上体や腕を大きく&規則的に上下させてしまうと、何だか奇妙なエクササイズみたいに見えてしまう。
動きが小さいと、何をやっているのかが全然見えてこない。
こんな難しさがあるということも、実際にやってみるまで、想像もしたこともありませんでした。
***
この日のレッスンの終盤に、先生方から素敵なアドバイスをいただきました。
最後にそれを紹介いたしまして、前後編・約1万字にわたりました第5回のまとめBlogを締めたいと思います。
「私もこのくだりの音楽を久々に聞いて、こんなにもドラマティックな曲を紡げるチャイコフスキーの偉大さをあらためて感じたんです。
ラッパの音は宮廷の光景をありありとイメージさせてくれて、そのなかで繰り広げられた出来事、王子の衝撃、オディールの高笑い……全部がちゃんと描かれています。
なので、みなさんもぜひ、この場面のドラマティックさを存分に感じてください。
そして恥ずかしがらず、思いきり心を入れて演じてみてください」(綾先生)
「このたった1回のレッスン、たった20分ばかりの時間のなかでは、みなさん絶対どうしていいかわからなかったはず。
だけどその割には、みなさんからこの場面のストーリーが見えました。
それは、指差すとか、肩や腕を揺らして笑うとか、ある程度“振り”が与えられたからだと思う。
振付というのは、その形をきちんと追えば、物語やセリフや感情が客席に伝わるようにできています。
顎を上げて上から目線を投げれば、ちゃんと邪悪に見える。
今日は、振付という“形”そのものが、役柄や感情を伝えるのだということを学べたと思います。
あとは、みなさん自身から発せられる表情や感情が、その“形”に伴ってくるともっといいですね」(竜太先生)