「ジゼル」レッスン、第9回(3/3)重要ポイントのまとめ!

 

突然ですが、私は“道場破り”が趣味です。

 

つまり、いろいろなバレエ(ダンス)スタジオに出かけては、体験レッスンを受けたり、ビジター受講したり、いろんな先生やダンサーの講習会を受けてみるのが好きなんですね。

(もしも新書館の季刊バレエ雑誌「クロワゼ」vol.63(2016年夏号)をお持ちの方は、76ページをご覧ください。私が過去にあるスタジオの道場破りをした時のもようを、イラストレーターの小野恵理さんの素晴らしい筆の力をお借りして、レポートさせていただいています)

 

どのレッスンにもそれぞれに良さがあり、必ず何か収穫や発見があって、いつも”バレエ”というダンスの懐の深さを感じて満ち足りた気持ちになるのですが、そんな数々の経験を経てきての、この「ジゼル」レッスン。

私にとりましては、これまで受けてきたなかでいちばん楽しいレッスンです。

本当に、心の底からそう感じています。

 

その理由は、2つあります。

 

ひとつ目はまず、高木綾さんと髙橋竜太さんというお二方が、こうした企画の講師としてこれ以上は望めないなと思うくらい、素晴らしいご指導をしてくださるから。

ご自身たちの地道な努力と厳しい鍛錬の末に会得されたバレエのエッセンスを、こんなにも惜しみなく、分かりやすく、愛情とユーモアたっぷりに教えてくださる。

おふたりには、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。

 

そしてもうひとつは、受講者のみなさんが、本当に誰ひとり例外なく熱心で、温かくて、寛容でいてくださるからです。

講習会を運営していく上で起こってくるいろんな事情をいつも大らかに受け止め、いつも私たち事務局のいちばんの理解者・協力者でいてくださる

このことが、この講習会をこんなにも楽しくて充実した時間にしてくれた最大の理由であり、生命線であったと思っています。

 

 

……と、まるで最終回のような前置きをしてみましたが、まだぜんぜん終わりではありません。

むしろここからが、当講習会シリーズの真のクライマックスであります( ・`ー・´) + キリッ

 

 

3月3日(土)、第9回レッスン。

この日学びましたのは、2幕、主役ふたりによるアダージオの場面です。

 

来るべき次回(第10回)・次々回(第11回)のレッスンでは、再び男性ダンサーをお招きし、リフト等を含む(!)パ・ド・ドゥを練習します。

その前段階となる今回は、各々のソロの部分と、ふたりのパ・ド・ドゥのさわりの部分の振付を教えていただきました。

 

 

哀れヒラリオンが早々に死の沼へと沈められ、次なるターゲットはアルブレヒト。今まさに、ミルタ&ウィリ達の怨念が、彼に襲いかかろうとしたその瞬間――。

 

「どうか彼を殺さないで」

 

ふわりとそよ吹く風のようにミルタの前へ進み出たのは、いまや精霊となったジゼル。アルブレヒトを自分のお墓である十字架の前へと導き、もはや肉体をもたないその体で、文字通り身を挺して彼を守ろうとします。

 

 

……というのが今回の場面のあらすじで、私たちが練習しましたのは、この、ふたりが十字架の前に立ったところから

 

まずはスタジオの下手側に位置を取り、エファセで脚を後ろのタンデュにして、両腕を広げて立つ。

ただこれだけのポーズでも、綾先生の口からは

 

「これは十字架を模すポーズなので、腕の高さは肩から水平に。それより上がっても下がってもダメです」

「水平なのだから、手首がだら~んと下がらないように。腕の延長上で、指の先もスーッと遠くへ伸ばしていってください」

「このポーズは自分の体を張って、アルブレヒトを守っているんです。だからもっと凛とした強さを心の内にもって、胸を斜め上に向かって広く張って!

 

……と、気を付けるべきこと、見せるべきポイントが次つぎと。

 

また受講者のおひとりからもナイスなご質問がありました。

「この時、ジゼルの目線はどこを見るのですか? ミルタをじっと見るのですか?」

これに対する綾先生のお答えは”No”

相手が我が愛する人の命を狙う集団のボスとはいえ、けっして戦闘モード(!?)で挑むわけではないと。

ここはただ凛とした気持ちをもって、中空を見るでも見ないでもない静かな視線を、スーッと斜め上へ……という感じが良いようです。

 

 

さて、このポーズから始まるジゼルのソロですが、振付を渡してくださる時、最初に綾先生が話してくださったお話が、とても素晴らしかった。

 

「ここはね、すごく哀しいソロであり、パ・ド・ドゥなんです。

なぜかというと、ジゼルにはきっと分かっているから。

この夜が終わったら、自分は土の中に消えてしまうのだということも、

だからこれが、彼と一緒にいられる最後の時なのだということも。

 

ですから、そんな思いを胸にいっぱい込めながら、体を使ってみてください。

アロンジェの腕に顔を添わせる角度もそう。

背中の向こうで、彼の存在を一生懸命感じようとする意識もそう。

そういう気持ちが分かっていたら、動きが変わってくると思う。

 

演者が役の感情を強く抱いて踊れば、それは必ず観ている人に伝わります。

この場面の彼女の気持ちをしっかりと見せられてこそ、最後の別れのシーンの悲しさが深くなるし、この作品が感動的になるんです」

 

バレエを習い始めて四半世紀、私は本当に初めて泣きながら踊りました

 

受講者のみなさんも、少なからずの方が同じように目を潤ませていらしたように見えたのですが、どうでしょうか。

 

その振付ですが、最初はこのような流れで始まります:

 

  • デヴェロッペ・ア・ラ・スゴンドで脚を高く(といっても私の高さは89度)キープしてからのアティテュード・クロワゼ・デリエール
  • そのままプロムナードしてから、アントルシャ・ロワイヤルで脚を変えて、ルルヴェ・ラン、フェッテしてアラベスクに入り、ウィリの腕でパンシェ

 

このくだりはソロのヴァイオリンが主旋律をずーっと弾いているのですが、その点についても、綾先生から素敵なアドバイスがありました。

 

「ほら、ここの音楽をよく聞いてみてください。

1本のヴァイオリンの音が、ずーっと途切れることなく続いているでしょう?

この音と同じように、ここは動きをずーっと途切れさせないで

ポーズでもカチッと止まるのではなくて、ふぅ~~~っとラインが伸び続けるような感じで、体をすごくコントロールして、滑らかに次のパへとつないでいってください」

 

***

 

このソロのあとはパ・ド・ドゥに入るので、「その部分は次回にやります」ということで場面をワープ。

続いてはここのパ・ド・ドゥのラスト、つまりアルブレヒトがひざまずいて、その背中に軽く寄り添うようにしてジゼルがアラベスクしてポーズ、というところから始まる、ジゼルとアルブレヒトがそれぞれソロを踊り合う場面を練習しました。

 

まずはジゼルが踊るところから。

ここから音楽がだんだんとテンポアップしてきて、音も軽くなって、いかにも小さなジャンプがいっぱい入ってきそうな曲になりますよね。

 

……小さなジャンプ。

 

それはシャンジュマンとかアントルシャとか、確かに小さな動きの跳躍ではあるけれど、その小さな跳躍がしばしば怒涛のように連結して、強大なる迫力を生み出してしまうから恐ろしい。

いわば「スイミー」的なやり方で踊る者の体力を容赦なく奪い去っていく、まさに道場破り……じゃなくて心臓破りのテクニックです。

 

 

そして曲が予感させてくれた通り、ここの振付にもちゃんと含まれておりました。

小さなジャンプの洪水が……((((;゜Д゜)))

 

 

具体的にここの振付をすべてバレエ用語で記しますと、たぶんこうなります↓

※上記のピンク色の文字は小さいジャンプ青色の文字は中くらい~大きなジャンプを示しています

 

 

ドゥーブル・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール・ソテ、ドゥーブル・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール・ソテ、ドゥーブル・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール・ソテ、ドゥーブル・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール・ソテ→パ・ド・ブーレ→スーブルソー・ポワソン、スーブルソー・ポワソン、スーブルソー・ポワソン、スーブルソー・ポワソン→シソンヌ・ウーベルトしてからポーズ

→(アルブレヒトが踊っている間はそのまま静止)

→(アルブレヒトに軽くリフトされながら)アンヴロッペ&アッサンブレ・デリエール、アンヴロッペ&アッサンブレ・デリエール、アンヴロッペ&アッサンブレ・デリエール、アンヴロッペ&アッサンブレ・デリエール空中でグラン・テカール×2回デヴェロッペしながら前へ

→(再びソロ)カトル、パッセ、カトル、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ、カトル、パッセ、カトル、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ、カトル、カトル、カトル、カトル、カトル、カトル、カトル、カトル、ロワイヤルで脚を変えて、カトル、カトル、カトル、カトルが終わったらススススーと後ろに下がってから両手アロンジェのルルヴェ・アラベスク、ウィリポーズのルルヴェ・アラベスク、ルルヴェ・アラベスク(第1)、アラベスク・フェッテ→両手アロンジェのルルヴェ・アラベスク、ウィリポーズのルルヴェ・アラベスク、ルルヴェ・アラベスク(第1)、アラベスク・フェッテ→アン・ボワテ×5回→シェネ×2回→ルルヴェ・アラベスクして袖へはける

 

 

……本当に、書いてるだけでカロリーを大量に消費した気分になれる(; ̄д ̄)

 

 

そして踊ってみると、もちろんこれまた生前のジゼルなら恋人に裏切られなくても心臓が破れちゃったに違いない……)と思うレベルのハードさ

 

私はもう、正直、カトル、パッセ、カトル、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ、パッセ……あたりに差し掛かった頃には、

 

も、もはやアルブレヒトのこととか心配してる場合ではない……(; ̄д ̄)

 

という心境でした。。。

 

 

時に脚がもつれ、絡まりそうになりながらも気が付いたのは、同じくジャンプだらけのミルタの踊りは主に“大きなジャンプ”ばかりだったけど、対するジゼルの踊りには、とにかく“小さなジャンプ”がいっぱいいっぱい詰め込まれているんだな、ということ。

 

ジゼルという女の子は精霊になってもやっぱり可憐なんだな……と、そんな風に感じました。

 

***

 

【ジゼルのポイント】

※この場面の感情表現や、音楽の感じ方については、上述の綾先生のお言葉をご参考にお願いします!

 

デヴェロッペ・ア・ラ・スゴンドに脚を上げていくところ

右足前第5ポジションから、まず右足を床からクペに持ち上げる瞬間がひとつの見せ場

床をつかみ上げるようにキュッと持ち上げつつ、その足を軸脚にきちっと引き寄せること。

ジゼルのチュチュは長いので、足首から下しか見えない。

だからこうした動きの繊細さや精度も、すごく見せ場になる。

 

アティテュード・クロワゼ・デリエールのところ

前に伸ばした右腕に顔を添わせるように傾けるけれども、あまりにも近づけすぎると“白鳥”っぽくなる

ジゼルでは腕に顔が隠れてしまわないようにしっかり空間を保ちつつ、気持ちで寄り添わせる感じ。

 

プロムナード

アン・ドゥダンのプロムナードは、後ろに上げた脚をキュッ、キュッとどんどんクロスさせていくようにすれば自然に回れるし、ポーズも崩れにくい。

 

アラベスク・パンシェ

脚を高く上げていくけれども、上半身はほとんど前に倒れないつもりで。

実際のところ、倒れても床と並行になる程度まで。それ以上は下にいかない。

 

アラベスク・パンシェから前(下手方向)へ走っていくところ

パンシェの時は、アームスをみぞおちの前でクロスしている(ウィリポーズ)。

前へと走り出す時は、まず最初に肘が前に引っ張られていくイメージ。

肘&二の腕にリードされて、次に上体、そして最後に脚が動き出す

 

ドゥーブル・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール・ソテのところ

アン・レールは足を回そうとしない。ただ“中!中!”と、つま先を内側に入れるほうにアクセントをつける。

 

スーブルソー・ポワソン

*このパは腰が痛い人は注意

*跳び上がったら空中で両膝を軽く曲げた状態にするのが正しいやり方ではあるけれど、そうするとすごく大変なので、前の脚(左脚)はわりと真っ直ぐのままで、後ろの脚(右脚)だけを軽く曲げるという見せ方でもOK

*ここは音通りに跳ぶとすごく大変だし、最後に音が余ってしまう。今回は音を1拍待って、裏取りで跳ぶべし

 

ルルヴェ・アラベスク×3回&フェッテ・アラベスクのところ

ルルヴェ・アラベスクはどちらかというと音を後取りするイメージで、ずずーっとたっぷり床を擦って立つ。

でもフェッテ・アラベスクは逆に音を早めに取り、あっさりとフェッテするべし。

 

アン・ボワテのところ

2回目のフェッテ・アラベスクが終わったら、そこから左肩をサッと前に入れてアン・ボワテをスタートするべし。

 

***

 

さて、次回からはいよいよ! とうとう!! ついに!!! 2回連続でパ・ド・ドゥの練習をいたします。

この日のレッスンの最後に、先生方よりありがたい“パ・ド・ドゥの心得”を頂戴いたしましたので、それもこちらに記しておきます:

 

「パ・ド・ドゥというのは、男性と女性という“別々の個体”が踊っているけど、ふたりは心を合わせ、呼吸を合わせ、力を合わせなくてはいけません

 

女性は、サポートしてもらうだけじゃだめ。

男性に負担を掛けないように、自分で引き上げて立つことをしっかりやらないといけないし、“自分の軸はここですよ”というのを相手に知らせるのも大事な役割です」

 

とくに、引き上げておくことがすごく重要です。

リフトって、体重の問題ではないんですよ。

引き上がっていない40キロはすごく重い。だけど、引き上がっている50キロは軽く感じるものなんです」